ネーションズリーグ予選で日本男子はどう戦ったのか。3年ぶりの日本開催は大盛況

ネーションズリーグ予選で日本男子はどう戦ったのか。3年ぶりの日本開催は大盛況

チケットは完売御礼

 FIVB主催のネーションズリーグ2022予選ラウンド第3週が、7月5日から11日まで丸善インテックアリーナ(大阪)にて開催された。試合直前の公開練習では、久しぶりに日本代表選手のプレーを間近に見ることができた。

丸善インテックアリーナ大阪の入り口

丸善インテックアリーナ大阪の入り口

大阪大会では初めてのスタメン起用となった高橋藍。ディフェンス面ではその長所を随所で発揮できていたが、同時にブロックなど課題も見えた試合だったように思う。試合結果は3-1で日本の勝利。大阪大会ではここまで負けなしの日本代表。最終日のブラジル戦でどこまで戦えるか期待がふくらんだ試合であった。この日、日本のトップスコアラー上位3人は1位宮浦健人、2位高梨健太、3位高橋藍。

日本戦チケットは完売。当日券は残念ながら販売なし!

日本戦チケットは完売。当日券は残念ながら販売なし!

 初戦は平日にもかかわらずチケットは完売。7000人ものファンでスタンドは埋め尽くされた。その後の試合も日本戦のチケットは全て完売で、当日券の発売もなし。アリーナ内のグッズ売り場には長蛇の列ができ、最終日には売り切れになるグッズが多く出て、売り場は商品がなくガラガラという状況であった。

  男子国際大会の「ワールドリーグ」に代わり、2018年から「FIVBネーションズリーグ」としてスタートしたのがこの大会。世界のトップチーム16が集結し、予選ラウンドを勝ち抜いた上位8チームがファイナルラウンドに進出し、世界最強チームの座を争う。新型コロナ感染拡大の影響で2020年大会は中止になったが、今大会で日本代表チームは初めてファイナルラウンド進出を果たすこととなった。

4選手が勇躍!〜7月6日 vsオーストラリア

 初戦の相手はオーストラリア。この時点での世界ランキングは日本が7位、オーストラリアは35位という状況であり、また、オーストラリアチームは若手中心の、いわゆるテストチームとしての要素が濃厚な構成であったため、一見格下相手という捉え方もできた。

 だが、前週までに2敗を喫している日本チームにとって、ファイナルラウンド進出を確実にするためにも負けるわけにはいかない一戦。オーストラリアは平均身長で日本チームより10センチ程度上回り、高さとパワーという点においては決して侮れないチーム。日本での初戦ということもあって、チーム全員気を引き締めて臨む試合となった。

 試合は1セット目序盤から日本ペースで確実に得点を重ね、1セット(25-18)、2セット(25-15)を連続して日本が獲る。このまま走るかと思われた展開であったが、3セットに入ると空気が一転。日本チームのミスもあり、序盤からオーストラリアにリードを許す形でゲームが進行。セット後半で日本が追い上げを見せたが、そこでもミスが重なり、3セット目を(23-25)失う。だが、4セット目では3セットでのミスをしっかりと修正し、危なげなく25-19で獲り、セットカウント3-1で日本が勝利を収めた。

 この試合では特に西田有志、石川祐希、高橋健太郎、大塚達宣の4選手の活躍が目立った。西田はイタリアで増加した体重がプラスに働いたこともあってか、サーブやスパイクのパワーが一段とアップし、世界トップクラスのOPに成長したことを感じずにはいられなかった。石川のうまさはいうまでもないが、困ったときに頼りになるキャプテンらしいプレーが随所で見られた。本誌の取材で今年2月にイタリア・セリエAで見たプレーより、さらに一段と磨きがかかっているように感じられた。

 高橋健はここ数年、ケガが多く、好調なプレーを見る機会が少なかったが、この日はブロックやクイックを見事に決め「日本のミドルとしてはやはり別格」と感じさせるプレーで観客を魅了していた。

長年の雪辱〜7月8日 vsカナダ

 2戦目の対戦相手はカナダ。この日、試合開始前に他会場で行われていた試合結果により、日本チーム初のファイナルラウンド進出が決定。安堵の中での試合となったが、ネーションズリーグではこれまでカナダに未勝利の日本チーム。ファイナル出場の朗報が吉と働くか凶と出るのか案じられる一戦となった。試合結果は見事3-1で日本の勝利。長年の雪辱を果たすことができた。スタメンとして出場した小野寺太志は日本チームのトップスコアラー3位に入る活躍を見せた。コートの中の大塚がとても楽しそうにプレーしている姿が印象的だった。

高橋藍が初スタメン〜7月9日 vsドイツ

ドイツ戦で宮浦健人が放ったスパイク

ドイツ戦で宮浦健人が放ったスパイク

決定力に差が〜7月10日 vsブラジル

大阪での最後の試合となったブラジル戦が終わった直後の両チームの選手たち

大阪での最後の試合となったブラジル戦が終わった直後の両チームの選手たち

 最終日に行われたブラジル戦。高さとパワーのブラジルチームに対して、日本チームも粘って追い上げを見せるも、ここまで少なかったサーブミスも目立ち、なかなかリードを奪えない展開のまま0-3でストレート負け。各セットとも僅差であったことを考えると、力負けというより、ここという場面での決定力に差が出た結果と言える。日本チームは9勝3敗で予選ラウンドを終了した。

フランスとの再戦でリベンジは?〜ファイナルラウンドへ向けて

 今年のファイナルラウンドは、イタリア・ボローニャにて7月20日から24日にかけて行われる。予選ラウンド5位の男子日本代表チームは、同4位のフランスと準決勝進出をかけて日本時間22日(金)1時より対戦する。予選ラウンド第2週(フィリピン・ケソン市)でフランスと対戦し、セットカウント0-3で日本は敗れており、昨年の東京2020五輪で金メダルを獲得しているフランスチームは、現在世界最強と言っても過言でない相手。フィリップ・ブラン監督の母国であるフランスチームと再びの対戦。強豪相手にどんな戦いを挑むのか。見逃せない一戦になるだろう。

【HEROE’S EYE】

7月4日公開練習の後、マスコミのインタビューに答える石川祐希キャプテン

「FIVBネーションズリーグ2022」男子予選ラウンドでの日本チームのHEROといえばやっぱり石川祐希キャプテン。昨年秋に開催された第21回アジア男子選手権大会でのプレーと今回の石川を比較すると、かなりの進化が見てとれた。昨年は腰痛に悩んでいたという噂も耳にしたが、今大会では「心技体とも確実にレベルアップしたな」というのが第一印象。石川のプレーを見るにつけ「やっぱりバレーは頭脳がものをいう競技だな」と思わずにはいられない大会であった。

 石川キャプテンが掲げていた今大会での目標は「ファイナルラウンドの出場権獲得」と「ファイナルラウンドでの1勝」。1つのミッションはクリアできたので、次のミッション「ファイナルラウンドでの1勝」に期待したい。

 また、ポーランドでの経験が確実にプラスになっていると感じたのが関田誠大のトスワーク。セッターの活躍はなかなか表に表れづらいが、効果的なミドルの使い方など、進化の跡を実感することができた。本人は「たかが1年ですよ」と謙遜していたが、されど1年だと思う。

 関田だけでなく、石川、西田、高橋藍など、海外を経験することでプレーだけでなくバレーに対する考え方を学び、彼らが各々リーダーシップを取ってチームをまとめている姿を目の当たりにして、次のオリンピック・フランス大会へ向けて、日本代表チームの大躍進を確信できた大会であった。

 がんばれニッポン!!

取材・文◎山路洋子

※本文中、選手名敬称略。高橋藍、高橋健太郎の「高」は本来は梯子ダカのタカです。
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