この選手にfocus 第1回 順天堂大学4年 キャプテン 染野 輝

この選手にfocus 第1回 順天堂大学4年 キャプテン 染野 輝

大学4年生にとっては大学生として出場できる公式試合が全て終了した

すでにVリーグ入りが決まっている選手はゆっくりすることなく、それぞれのチームに合流していくことだろう

少し時間が経ってしまったが、今年の「秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会(通称・全日本インカレ)」で準優勝を果たした順天堂大学のキャプテン・染野 輝選手への取材記録を振り返ってみることにした

 どこの大学でもバレー選手なら「全日本インカレ優勝」が在学中の大きな目標である。今年の順天堂大学も全日本インカレ優勝を目指し、春季のリーグ戦からどのようなチームにするかを考えた上で、勝つために必要なことは何かを模索していた。

 春季リーグの初戦、初めてキャプテンマークを背負う染野選手の姿を見つけた。後ろから「キャプテン!」と何度か声をかけたがなかなか振り返ってくれない。聞こえていないのかなと思っていたところ、やっと自分のことだと気づいて気恥ずかしそうな笑顔で振り向いた。

 取材では「今日の結果に一喜一憂するのではなく、この1年で何をしなければならないかをみんなで考えて気持ちをひとつにして進んでいきたい」と語っていたが、すでにキャプテンの難しさを実感していたようで「性格も考え方も違う選手たちをどうまとめていくか? どう声をかけたらいいのか? 本当に難しいです」と真剣に語る横顔が印象に残っている。

 季節が変わり、秋季リーグがはじまったころにはようやくキャプテンらしさも板につき、自分のプレーにも自信がついてきたことが感じられるようになっていた。スパイクやサーブの威力が増していたことから、トレーニングにも力を入れているなと感じたのもこのころだ。

 秋季リーグでは「大学生活の最大の目標はやはり全日本インカレ制覇。そのために秋季リーグをどう戦っていくかが大切だと思っています」と全日本インカレへの思いを語ってくれたが、取材後「だいぶキャプテンらしくなってきたね」と話しかけたところ、「自分自身でも大学生活で大きく変わったと自覚しています。そのきっかけを作ってくれたのは先輩・高橋和幸さん(現・ジェイテクト STINGS)の存在。何がということでなく、何から何まで教えてもらった、見せてもらった気がしています。大学生活の中で和幸さんと過ごした日々がなければ、今の自分はいないと思っています」という言葉が返ってきた。

 残念ながら決勝で早稲田大学に敗れ、念願の優勝は果たせなかったが、どんな厳しい局面でも選手全員に声をかけ、率先してボールを打ちにいく。たくましいキャプテンに成長した姿をまのあたりにするができた。高校時代の彼の性格を考えるとまるで別人のように私の目には映った。

 決勝の対戦相手である早稲田大学でMBとして活躍した伊藤吏玖選手は、駿台学園高校時代のチームメイト。当時駿台を取材した際、染野選手に話を聞いたことがあったが、「吏玖君がアンダーカテゴリーの代表合宿に行っていなければ、僕が取材を受けることはなかったと思うんです。本当にすごい選手なんですよ!」と真顔で語っていたことを思い出す。性格がいい子だなということは十分伝わってきたものの、スポーツ選手としてはもう少し負けず嫌いであってもいいのではと思ったのも事実。当時の彼は間違いなくチームを引っ張るタイプではなかった。

 あれから4年。東京グレートベアーズに入団することが決まっている伊藤選手と、サントリーサンバーズへの入団が決まっている染野選手。今後二人はVリーグで戦っていく。

 二人ともこの先どんな成長を見せてくれるのか……。お互い切磋琢磨し、日本バレー界を牽引していく選手として末長く活躍してくれることを願っている。

● PROFILE ●
名前:染野輝
身長:185cm
ポジション:OH
出身地:茨城県

取材・文:HEROES編集部
協力:一般社団法人 関東大学バレーボール連盟
   順天堂大学男子バレー部

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